熱間鍛造

金属を高温で加熱し、プレスなどで成形する熱間鍛造。この加工法は、材料に高い強度と靭性を与えます。この記事では、熱間鍛造の原理からメリット・デメリット、そしてアルミニウムへの活用可能性までを解説します。

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熱間鍛造とは?

熱間鍛造とは、金属を高温に加熱したうえで、プレスなどの圧力を加えて金型で成形する鍛造加工法のことです。この加工方法により、金属は高い強度と靭性を獲得できます。「熱間」とは、一般的に再結晶温度以上、融点未満の温度範囲で行う加工を指します。

たとえばアルミニウムの場合、約400~450℃での加工が主流です。この温度帯では金属が軟化し、成形しやすくなります。熱間鍛造は、金属を真っ赤に加熱し、柔らかくなった状態で圧力を加えて所定の形状に仕上げる、効率的な金属加工手法です。

熱間鍛造の仕組み

熱間鍛造の原理

熱間鍛造では、金属を再結晶温度以上に加熱することで、内部にある歪んだ結晶構造が正常な状態に再構成される「再結晶」の現象を利用しています。この効果により、比較的少ない力で金属を変形させることが可能となります。

また、鍛造によって鍛流線(メタルフローライン)と呼ばれる、材料内部に沿った流れ模様が形成されることも大きな特徴です。これにより金属の靭性や粘り強さが向上し、曲げや衝撃といった繰り返しの応力にも強くなるという利点があります。なお、削り出しや鋳造ではこの鍛流線が形成されず、構造的に脆くなる傾向があります。

熱間鍛造のプロセス

熱間鍛造の工程は、以下のように進行します。

  • 加熱:金属材料を鍛造に適した温度まで加熱します。アルミニウムの場合は400〜450℃前後が目安です。
  • 成形:加熱された金属を、鍛造プレスやハンマーで金型に圧入して成形します。とくに金型を使用する方式は「熱間型打ち鍛造」と呼ばれ、成形と同時に金属内部の結晶が再構築され、材料強度が向上します。
  • 後処理:必要に応じて、熱処理や表面処理を施して製品の仕上げを行います。後処理には、ショットブラスト、酸洗い、苛性処理、各種めっき、塗装、アルマイト処理(アルミニウム専用処理)などが含まれます。

熱間鍛造のメリットとデメリット

主なメリット

  • 高い機械的強度と靭性の実現:内部組織の緻密化により、耐久性、引張強度、衝撃吸収性などが大幅に向上します。
  • 複雑形状の成形が可能:材料が高温で軟化するため、複雑な形状でも一度の工程で成形できます。
  • 高い材料利用効率:製品形状に近い状態で成形できるため、材料ロスが少なく、生産コストの削減につながります。
  • 鍛流線による構造強化:鍛流線が形成されることで、繰り返し荷重に対する耐性が強化され、長寿命化が図れます。
  • コストダウン効果:鋳造や切削加工に代わる工法として有効であり、中空鍛造や一体成形によって、省材料化や工程短縮が可能です。アルミニウムでも同様の効果が得られます。
  • 大型部品への対応:大型・重量物の加工にも適しており、特に自動車・航空機・重機分野でのニーズに対応可能です。

想定されるデメリット

  • 高エネルギーコスト:加熱およびプレス機の運転には大量のエネルギーが必要となります。アルミニウムは鉄鋼ほどの温度は不要ですが、加熱工程は避けられません。
  • 酸化・スケールの発生:高温環境下では金属表面が酸化しやすくなり、スケール(酸化膜)が生じる場合があります。アルミニウムは比較的酸化スケールが薄いものの、環境制御や前処理の工夫が求められます。
  • 寸法精度の管理が難しい:熱膨張や収縮の影響により、冷間鍛造に比べて寸法精度の管理が難しいとされます。
  • 初期設備投資が大きい:加熱炉や大型プレス設備、冷却装置などの導入に多額のコストが発生するため、導入時はROI(投資対効果)の検討が重要です。
  • 作業環境に対する安全対策が必要:高温作業が中心となるため、作業者の安全を守るための保護具や安全管理体制の整備が不可欠です。
  • アルミニウムと熱間鍛造の活用可能性

    アルミニウムは、その軽量性・耐食性・加工性の高さから、さまざまな分野で幅広く使用されています。熱間鍛造によって機械的強度をさらに高めることで、自動車部品や航空機の構造部材といった、高耐久性を求められる用途にも対応可能です。

    熱間鍛造を活用することで、高品質かつコスト効率に優れた製品の量産化が実現できます。熱間鍛造の導入は、製品開発の競争力強化において、有効な一手となるでしょう。

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※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。