冷間鍛造(れいかんたんぞう)は、金属を加熱せず常温付近のまま金型で強い圧力をかけ、材料を塑性流動させて目的形状に成形する加工法です。冷間鍛造は熱を使わない点が最大の特徴で、切削や鋳造とは異なるメリットを多数備えています。
材料に圧縮応力を与えると、金属内部の結晶が滑りながら変形します。冷間鍛造ではこの塑性変形を室温で起こすため、熱膨張・収縮による寸法変動がほぼありません。工程設計では、金型の逃げ量やスプリングバックを厳密に予測し、寸法精度を数十ミクロン単位で管理します。
冷間鍛造は優れた量産・高精度加工法である一方、導入にはいくつかのハードルがあります。まず、不可欠となる金型の設計・製作コストが高く、完成までに数週間から数か月を要するため、初期投資が大きくなりがちです。この金型は加工中に摩耗やチッピングが進むため、量産を続けるには定期的なメンテナンスや交換が欠かせません。加えて、段取り替えの工数が大きいため、製造ロットが小さい場合には金型償却費が製品単価に直接跳ね返り、切削など別工法よりもコスト高になることが少なくありません。
さらに、常温で素材を押し潰す冷間鍛造では材料の変形抵抗が高く、複雑・非対称形状を実現するには高度な工程設計と豊富な経験値が必要です。特にエッジの立ったコーナー部では応力集中が起こりやすく、コーナーRが自然に付いてしまう点は避けられません。
設計段階で十分な逃げや潤滑条件を盛り込まなければ、成形途中で割れが生じたり、加工硬化により材料が脆化してしまったりするリスクもあります。脆化を避けるためには中間焼鈍や応力除去処理を的確に挟むなど、工程全体を視野に入れた管理が不可欠です。
アルミニウムは冷間鍛造と組み合わせることで、切削では難しいリブやアンダーカットを一体化した高精度ネットシェイプ成形が可能となり、部品点数の削減やアセンブリ工程の簡素化に大きく寄与します。
一方、アルミは加工硬化が早く、潤滑管理を怠ると割れやすい側面があります。適切な処理を確実に施し、延性を回復させる工程設計も不可欠です。また、アルミ用金型は超硬合金や高靱性粉末ハイスを選び、表面処理ではんだ付きを抑制する配慮が求められます。
総合すると、アルミニウムは冷間鍛造のもつ「高精度・高歩留まり・高生産性」という利点を最大限に引き出せる素材です。EV用端子やブラケット、航空機・ドローン部品、さらにはヒートシンクや時計ケースなど、軽量かつ高機能を要する次世代製品で、アルミ冷間鍛造は極めて有望な選択肢となります。適切な前処理と工程管理を行うことで、コスト競争力と環境負荷低減を両立した先進部品製造が実現できます。
既存製品の改良や新製品開発において、より高品質な素材を求めるメーカー担当者必見! 代表的な二次加工展伸材である「管材」「板材」「線材」それぞれの領域で高い技術や深い知見を持つメーカーを紹介します。※1
※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。