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アルミにおける研磨加工

アルミニウムの研磨加工は、製品の表面を滑らかにし、美しい光沢を与えるための表面処理技術です。この加工は、単に外観を向上させるだけでなく、素材の持つ耐食性や熱伝導性といった機能的な特性を高める目的でも行われます。本ページでは、アルミの特性と研磨加工の関連性、加工の種類と特徴、研磨によって得られるメリットや注意点について解説します。

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アルミの研磨加工とは?

砥粒と呼ばれる硬く微細な粒子を用いて、アルミニウム材料の表面を少量ずつ削り、滑らかで光沢のある状態に仕上げる加工方法です。マイクロメートル単位での精密な表面調整が可能となり、製品に求められる寸法精度や表面粗さを実現します。

主な目的は、製品の外観を美しく仕上げる「美観の向上」ですが、それだけではありません。表面の微細な凹凸を取り除くことで、摩擦抵抗を減少させたり、表面に均一な酸化皮膜を形成しやすくして耐食性を高めたりするなど、製品の機能性を向上させる重要な役割も担っています。

アルミに適した特性

耐食性の高さ

アルミニウムは、空気中の酸素と反応して表面に薄い酸化皮膜を自然に形成する性質があります。この酸化皮膜が不動態として機能し、内部の金属を腐食から保護するため、高い耐食性を示します。研磨加工によって表面の凹凸や不純物が取り除かれ、より均一で緻密な酸化皮膜が形成されやすくなります。

アルミニウム本来の耐食性が向上し、特に化学薬品や海水などが存在する環境下でも、製品の品質を長期間維持することが可能になります。

熱伝導性の高さ

アルミニウムは、優れた熱伝導性を持ちます。熱を効率的に伝えたり、あるいは逃がしたりすることが求められるヒートシンクや熱交換器などの部品に広く利用されています。

研磨加工を施し、表面を滑らかに仕上げることで、接触面における熱の伝達効率が向上します。表面が平滑になることで接触面積が増加し、熱抵抗が減少するためです。冷却装置の放熱性能や、熱を利用する製造工程の効率を高めることができ、製品全体のパフォーマンス向上に貢献します。

軽量性・リサイクル性

アルミニウムは比重が鉄の約3分の1と軽量であり、製品の軽量化に大きく貢献する素材です。輸送機器や携帯機器など、重量が性能に影響を与える製品において重要な利点となります。

また、アルミニウムはリサイクル性に優れた金属としても知られています。使用済みの製品から回収されたアルミニウムは、品質を大きく損なうことなく再生することができ、新たな製品へと生まれ変わります。

アルミの研磨加工の種類と特徴

平面研磨

その名の通り、アルミニウムの平らな面を研磨し、高い平面度と滑らかな表面粗さを実現する加工方法です。主に平面研磨盤と呼ばれる装置を使用し、砥石や研磨剤を用いて表面を削り取ります。

精密な寸法精度が求められる機械部品や、光の反射などが重要となる光学機器の基板加工に用いられます。研磨機を用いることで、比較的に大きな面積の加工にも対応できる点が特徴です。半導体製造装置の部品や精密機械の定盤など、平滑な面が性能を左右する製品に適しています。

センタレス研磨

円筒状や円錐状のアルミニウム部品を加工対象とする研磨方法です。加工物(ワーク)を固定する中心軸(センター)を持たないことから「センタレス」と呼ばれます。ワークを調整車と研削砥石で挟み、回転させながら表面を研磨することで、高い寸法精度と真円度を得ることができます。連続的に部品を投入できるため生産性が高く、自動車のシャフトやモーターのローター、精密ベアリングの軸受けなど、円滑な回転や摺動が求められる部品の大量生産に適した研磨方法です。

CB研磨(化学機械研磨)

CMP(Chemical Mechanical Polishing)とも呼ばれ、化学的な作用と機械的な研磨を組み合わせた加工技術です。研磨スラリーと呼ばれる、砥粒と化学薬品を含んだ液体を介して研磨パッドで加工物の表面を磨きます。

化学薬品が表面をわずかに軟化・溶解させ、その部分を機械的な力で効率的に取り除くことで、平滑で欠陥の少ない表面を得ることができます。半導体ウエハーの平坦化や、光学フィルムの基板など、ナノメートルレベルの表面精度が要求される分野で活用されています。

バレル研磨

バレル(樽)と呼ばれる容器の中に、加工する部品、研磨石(メディア)、そしてコンパウンドと呼ばれる研磨助剤と水を入れ、容器を回転または振動させることで研磨する方法です。容器内の部品とメディアが流動しながら互いに摩擦し合うことで、部品全体の表面が均一に研磨されます。

小さな部品のバリ取りやスケール除去、R付け(角を丸める加工)などに適しており、一度に大量の部品を処理できるため、コストを抑えながら品質を安定させやすいという利点があります。

バフ光沢研磨

綿やフェルトなどの柔らかい素材で作られた「バフ」と呼ばれる円盤状の工具に、研磨剤を塗布して高速回転させ、そのバフをアルミニウムの表面に押し当てて磨き上げる方法です。主に仕上げ工程で用いられ、鏡面仕上げを得ることができます。

手作業による加工が中心となるため、複雑な形状の製品や、細部の丁寧な仕上げが求められる場合に適しています。装飾品や建築内装材、高級家電の筐体など、高い意匠性が要求される製品に多く採用されています。

研磨加工で得られるメリット

美観の向上

研磨加工によって得られる大きなメリットの一つが、製品の美観向上です。表面の微細な傷や凹凸が取り除かれ、滑らかで光沢のある仕上がりになります。特にバフ光沢研磨などを用いることで、鏡のような美しい表面を作り出すことができ、製品に高級感や清潔感を与えます。

精度の向上

研磨加工は、マイクロメートル単位で表面を削り取る精密な加工であるため、製品の寸法精度や形状精度を向上させることができます。切削加工などの前工程で生じたわずかな歪みや誤差を修正し、設計値通りの正確な形状に仕上げることが可能です。

耐久性の向上

アルミニウムの表面を滑らかにすることで、腐食の原因となる水分や汚染物質が付着しにくくなります。また、均一で緻密な酸化皮膜が形成されやすくなるため、耐食性が向上し、過酷な環境下でも錆や腐食の進行を抑制できます。

アルミ研磨加工の注意点

研磨加工は仕上げ工程として追加されるため、その分のコストと時間が必要になります。特に、高い精度や鏡面仕上げを求める場合は、複数の工程を経たり、熟練した作業者による手作業が必要になったりするため、コストが高くなる傾向があります。

アルミニウムは比較的柔らかい金属であるため、研磨時に加える圧力や摩擦熱の管理が重要です。美しく仕上げた表面は、その後の取り扱いで傷がつきやすいという側面もあります。特に鏡面仕上げの製品は、わずかな擦り傷も目立ちやすいため、輸送や保管、使用時の管理に注意が求められます。

まとめ

アルミにおける研磨加工は、製品の表面を滑らかにし光沢を与えることで、外観の美しさを向上させる技術です。しかしその役割は、美観の向上に留まりません。アルミニウムが持つ耐食性や熱伝導性といった特性をさらに引き出し、寸法精度を高めることで、製品の機能性や耐久性を向上させる重要な役割を担っています。

加工方法には、平面研磨やバフ光沢研磨、バレル研磨など多様な種類があり、製品の形状や求められる品質に応じて適切な方法が選択されます。コストや加工時間といった側面も考慮しながら、目的に合った研磨加工を施すことで、アルミ製品の付加価値を大きく高めることが可能です。

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※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。