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管・中空(パイプ・チューブ・シャフト等)

加工に用いられるアルミ合金の種類

アルミの管状・中空加工では、押出加工が主流であり、その用途で最も多く使われるのは「6000系合金」
です。これはアルミニウムにマグネシウム(Mg)とシリコン(Si)を添加したもので、強度、耐食性、加工性のバランスに優れています。

特に代表的なのは以下の2つです。

A6063

  • 特徴:
    押出加工性が非常に良く、複雑な断面形状の製造に適しています。
  • 強み:
    耐食性が良好で、特にアルマイト処理(陽極酸化皮膜処理)のノリが良く、美しい外観に仕上がります。
  • 主な用途:
    建築用サッシ、ドア枠、手すり、インテリア部材など。

A606

  • 特徴:
    A6063よりも強度が高い合金です。
  • 強み:
    強度と耐食性のバランスが取れており、T6処理(熱処理)による強度向上が可能です。
  • 主な用途:
    自動車部品(フレーム、バンパー芯材)、鉄道車両、産業機械の構造材など。

このほか、用途や必要な特性に応じて、以下のような合金も使用されます。

  • 1000系(純アルミ):
    強度は低いですが、耐食性・熱伝導性が高いため、熱交換器や電装部品に用いられます。
  • 3000系(Mn系):
    1000系にマンガン(Mn)を添加し強度を高めた合金で、成形性・耐食性が良く、配管や一般消費材に使われます。
  • 5000系(Mg系):
    強度と耐食性のバランスに優れ、特に海水への耐性が高いため、船舶や自動車の外装部品に活用されます。

それぞれの合金の特徴を把握し、必要強度・加工性・コストに合わせて選ぶことが品質向上のカギとなります。
知見のあるメーカーへ直接相談の上、材質を決めていくのもよいでしょう。

加工方法の種類と解説

アルミの管状・中空加工は、「①素材(中空材)を作る加工」と「②作った素材を製品の形にする二次加工」に大別されます。

①中空材の製造(押出加工・引抜加工)

中空・管状の素材を作るための加工方法です。

  • 押出加工
    金太郎飴やところてんと同じ原理です。「ビレット」と呼ばれるアルミ合金の円柱を400~500°Cに加熱し、作りたい断面形状の穴が開いた「ダイス(金型)」に対し、プレス機で強力な圧力をかけて押し出します。 中空の仕組み(ポートホールダイス)
    中空形状を作るには「ポートホールダイス」という特殊な金型が使われます。
    内部で一度アルミの流れを分け(ポート)、空洞を作る「マンドレル(中子)」を迂回させた後、出口手前で再びアルミを合流・圧着させることで、継ぎ目のない中空形状を一体で成形できます。
  • 引抜加工(ドローイング)
    押出加工で製造した素管を、さらに寸法精度を高めたり、肉薄にしたりするために行われます。素管の内側に「プラグ」という治具を入れ、外側からダイスを通して引き抜くことで、押出よりも格段に寸法精度が高い「シームレスパイプ(継目無管)」が得られます。

②中空材の二次加工

押し出された中空材に、さらに手を加えて最終製品に仕上げる加工です。

  • 曲げ加工:
    ロールベンダーやパイプベンダーを使い、建材のアール部材や自動車のパイプ構造などを作ります。
  • 切削加工:
    NC旋盤やマシニングセンタで、穴あけ、端面加工、溝加工などを行い、高精度な部品に仕上げます。
  • 拡管・縮管加工:
    パイプの端部を広げたり(拡管)、狭めたり(縮管)する加工で、継手や熱交換器部品の製造に活用されます。
  • 溶接加工:
    TIG溶接、MIG溶接、レーザー溶接などを用い、中空材同士や、中空材とプレート材を組み合わせて構造物を作ります。

これらを組み合わせることで、軽量かつ高精度な部品を製造できます。必要に応じて、アルマイト処理などの表面加工も行います。

加工の注意点

アルミの管状・中空材加工には、素材特性や製造方法に起因する特有の注意点があります。

押出加工時の注意点

高品質な中空材を押出すためには、高度なノウハウが求められます。

  • 金型(ダイス)設計の難しさ:
    ダイス内部でのアルミの流れが均一でないと、肉厚が変わる「偏肉」や、中心がズレる「偏芯」が発生します。品質は金型設計でほぼ決まります
  • ウェルドラインの管理:
    ポートホールダイスで合流する部分(ウェルドライン)の圧着が不十分だと、強度が低下したり、表面にスジが出たりします。
  • 押出条件の管理:
    ビレットの加熱温度や押し出す速度が不適切だと、表面が荒れる「むしれ」や「ひび割れ」、寸法不良が発生します。
  • 真直度(まっすぐさ)の確保:
    押出直後の材料は冷却時に曲がりやねじれが生じるため、「ストレッチャー(引張矯正機)」でまっすぐに矯正する作業が必要です。特に薄肉材は難易度が高くなります。

二次加工・取り扱い時の注意点

押出後の加工や取り扱いにも注意が必要です。

  • 熱による変形:
    アルミは熱伝導率が高く、曲げ加工や溶接の熱で歪みやすい特性があります。特に薄肉パイプは変形しやすいため、治具設計や加工方法の工夫が重要です。
  • 傷の出やすさ:
    表面が柔らかく傷がつきやすいため、外観不良や強度低下につながることがあります。取り扱い、保管、運搬には注意が必要です。
  • 切削時の溶着:
    切削熱でアルミが工具(刃物)に溶着しやすい性質があります。これを防ぐため、アルミに適した刃具の選定や、切削油の使用が不可欠です。

加工に使われる機械

アルミの中空・管材加工には、大掛かりな押出ラインと、多様な二次加工機が使われます。

押出ラインの主な設備

押出加工は、以下のような設備で構成される「押出ライン」で行われます。

  • ビレットヒーター(加熱炉):
    アルミのビレット(円柱)を400~500°Cまで加熱します。
  • 押出プレス機:
    加熱したビレットをダイス(金型)から高圧で押し出す、ラインの心臓部です。
  • 冷却装置:
    押し出された高温の材料を、ファン(空冷)や水スプレー(水冷)で適切に冷却します。
  • ストレッチャー(引張矯正機):
    冷却時に生じた材料の曲がりやねじれを、引っ張ってまっすぐに矯正します。
  • 切断機(ソー):
    矯正された長い材料を、製品の長さに切断します。
  • 時効硬化炉(熱処理炉):
    (A6061などの場合)熱処理(T6処理など)を行い、必要な強度を引き出します。

二次加工の主な機械

押出材をさらに加工するための機械です。

  • 曲げ加工機:
    3ロールベンダー、CNCパイプベンダーなど。
  • 切削加工機:
    NC旋盤、5軸マシニングセンタなど。
  • 端部成形機:
    拡管機、縮管機など。
  • 溶接関連設備:
    TIG/MIG溶接機、レーザー溶接機など。

加工会社がどの設備を保有しているかで、対応できる形状・精度が大きく変わります。

素材の用途

アルミの管状・中空材料は、「軽量」「高剛性(少ない材料で丈夫)」「耐食性」「加工性」を活かし、非常に幅広い分野で使用されています。

建築・建材

  • アルミサッシ(窓枠、ドア枠)
  • ビルのカーテンウォール(外壁の枠)
  • 手すり、フェンス、手すり

自動車・輸送機器

  • 自動車:
    車体骨格(スペースフレーム)、バンパービーム(芯材)、足回り部品、熱交換器の配管
  • 鉄道車両:
    車体(大型中空押出形材を溶接して製造)
  • 自転車:
    フレーム、ハンドル、シートポスト

産業機械

  • 工場の自動化ラインのフレーム
  • ロボットアーム
  • 空圧・油圧シリンダーのチューブ
  • 半導体製造装置のフレーム

スポーツ・日用品

  • テントのポール
  • スキーのストック・ポール類

最近はEV(電気自動車)や再生可能エネルギー設備における軽量部材としての需要も増えています。


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アルミの中空加工は、依頼先の技術力によって品質が大きく左右されます。会社を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。

選ぶポイント(チェックリスト)

  • 金型設計・製作のノウハウがあるか
    高品質な中空加工は金型技術が鍵です。難形状の実績が豊富か、自社で金型設計・修正ができるかを確認しましょう。
  • 二次加工・表面処理まで一貫対応できるか
    押出後の切断、穴あけ、曲げ、溶接、アルマイト処理までをワンストップで請け負ってくれる会社は、コスト、納期、品質管理の面で有利です。
  • 得意分野(材質・形状)が合っているか
    薄肉・異形中空材の実績があるか、A6061などの高強度材の取り扱いが得意かなど、自社の要求と合っているかを見極めます。
  • 品質保証体制が整っているか
    ISO認証はもちろん、寸法、偏肉、強度などを検査する体制(検査機器含む)が整っているかを確認します。
  • 技術的な相談か・擦り合わせが可能
    図面を渡すだけでなく、用途や必要な機能を伝えた上で、技術的なディスカッションや合金選定の相談ができる会社を選びましょう。

選ぶときの注意点

  • 初期費用(金型費)だけで判断しない
    押出加工には必ず金型費がかかります。極端に安い場合、金型の品質や耐久性、あるいは後の製品単価で調整されていないか確認が必要です。
  • 納期対応力・ロット柔軟性を確認する
    開発段階では、試作や小ロットに柔軟に対応してくれるかが重要になります。
  • 特殊形状の場合は歩留まりも確認する
    複雑な形状ほど、金型費用や製造歩留まり(不良率)についても事前に確認しておくことが重要です。

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アルミ加工の依頼を検討している方は是非お役立てください。

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  • 半導体の導電材、自動車部品のネジ用素材など、ミリ単位の精密加工が必要な部品の製造実績もある。

※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。