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アルミにおける大径研磨

大型部品の精度を左右する「大径研磨」は、アルミなどの大径ワークをミクロン単位で仕上げる重要な加工技術です。真円度や表面品質を高めることで、機械性能の安定化と部品の長寿命化に貢献します。本記事では、その仕組みやメリット、注意点を解説します。

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大径研磨とは?

大径研磨とは、直径300mmを超えるような大型シャフトやロール、パイプなどに対して行う高精度な仕上げ加工です。円筒研削盤を用い、ミクロン単位の寸法精度と滑らかな表面を実現することで、産業機械やインフラ部品の性能維持と長寿命化に貢献します。

大径研磨の仕組み

加工対象であるワークを主軸と心押台で固定し、回転させながら高速回転する砥石を外周に当てて微細に削り取ります。熱変形やたわみを抑えるために、冷却装置や振れ止め機構を併用しながら、安定した精度を確保します。

大径研磨のメリット

高精度な寸法仕上げ

大径研磨は、直径の大きな部品に対してミクロン単位(1/1000mm)の高精度な寸法加工を実現できる技術です。旋盤加工などでは難しい厳密な真円度や円筒度を確保することで、大型シャフトやロールといった重要部品が設計どおりの性能を発揮するために必要な公差を満たします。その結果、組立時の調整作業を最小限に抑え、製品全体の品質向上にも大きく貢献します。

優れた表面品質の実現

研磨によって部品表面の微細な凹凸や傷が取り除かれ、鏡面仕上げに近い高品位な表面粗さを実現できます。この優れた表面品質は、特に摺動部や回転部で重要な役割を果たし、摩擦抵抗や摩耗の低減につながります。その結果、機械全体のエネルギー効率が向上し、焼き付きや故障の発生リスクを抑えながら、安定した長期運転を維持することが可能です。

大型部品の機能維持と長寿命化

大型の産業機械部品(発電用タービンシャフト、製鉄圧延ロールなど)は、常に高い負荷と過酷な環境に晒されます。大径研磨で精密に仕上げられた部品は、高い寸法精度と滑らかな表面により、負荷が均等に分散され、疲労破壊に対する耐性が向上します。この品質が部品の長寿命化と、設備のダウンタイム(停止時間)の削減に直結し、製造業の生産性維持に大きく貢献します。

大径研磨の注意点

ワークのたわみと振動対策

大径部品は自重が大きいため、加工中にたわみ(垂れ下がり)や振動が発生しやすく、それによって真円度や円筒度の精度が大きく損なわれます。これを防ぐには、適切な位置に振れ止めや心押台を複数設置し、ワークを確実に支持することが求められます。さらに、砥石の切り込み量(パス)や送り速度を慎重に設定し、切削抵抗に起因する振動を抑制することが、安定した高精度研磨を実現するうえで重要です。

熱変形と冷却管理

研磨加工は熱を発生させ、特に大径部品は熱容量が大きく、局所的な温度変化による熱変形が寸法精度に直結します。変形を防ぐためには、適切な流量と温度の研削液(クーラント)を用いた積極的な冷却管理が不可欠です。さらに、加工後のワークが常温に戻るまでの時間経過を考慮した上で測定を行うなど、熱による影響を排除した厳密な温度管理と測定体制が求められます。

正確な機上・機外測定

大径部品は、機上で正確な寸法を測定することが困難であり、測定誤差が公差オーバーに繋がるリスクがあります。そのため、高精度な機上測定器を導入し、加工と測定を繰り返し行いながら(追い込み加工)目標寸法に近づける必要があります。また、機外に搬出した後の三次元測定機などによる最終検査においても、ワークの据え付け方や温度環境が測定結果に影響しないよう細心の注意が必要です。

まとめ

大径研磨は、巨大なアルミ部品に精密な寸法精度と高い表面品質を付与するための重要な技術です。優れた研磨品質は、摩耗や振動の抑制、エネルギー効率の向上など、多方面での効果をもたらします。一方で、たわみや熱変形、測定誤差といった課題にも注意が必要です。安定した加工を実現するためには、適切な支持構造や冷却管理、測定体制を整えることが欠かせません。高精度な大径研磨の実現は、結果として産業設備全体の信頼性と長期稼働を支える礎となります。

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※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。