アルミ加工の匠 » アルミ合金の種類と成分 » アルミ2000系・A2017

アルミ2000系・A2017

A2017(ジュラルミン)は、強度が高く切削性に優れたアルミ合金です。本記事では、A2017の基本特性から加工時の注意点、加工事例を紹介します。設計時の材料選定や精密加工の外注を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

A2017(2000系アルミ)とはどんな材質?

2000系アルミ合金(ジュラルミン)の概要

2000系アルミ合金は、一般的に「ジュラルミン」という名称で広く認知されており、アルミニウムに銅を添加することで強度を高めた材質です。数あるアルミニウム合金の中でも歴史が長く、軽量でありながら鋼材に近い引張強度を持つため、航空機や精密機器の構造材として重宝されてきました。一方で、銅を含んでいる性質上、他のアルミ合金と比較すると耐食性や溶接性に課題がある点も、この系統ならではの特徴と言えるでしょう。

A2017の化学成分(銅を主成分とする合金)

A2017の主要な添加元素は銅であり、その含有率は概ね3.5%から4.5%程度の範囲で構成されています。熱処理によって合金内に微細な粒子が析出するこの銅の働きが、材料全体の硬度や強度を大きく向上させる仕組みです。また、マグネシウムやマンガンも微量に含まれており、これらが複雑に作用し合うことで良好な切削性を生み出しています。成分構成が強度に直結するため、非常にバランスの取れた合金として知られている材質です。

A2024(超ジュラルミン)やA7075(超々ジュラルミン)との違い

A2017の上位種として位置づけられるA2024(超ジュラルミン)は、さらに多くのマグネシウムを含有しており、A2017を上回る強度と耐疲労性を備えています。また、7000系のA7075(超々ジュラルミン)は亜鉛を主成分としており、アルミニウム合金の中では極めて高い強度を誇るのが特徴です。これらと比較すると、A2017は強度の面では一段階譲るものの、市場への流通量が安定しており、比較的入手しやすく加工しやすいという汎用性の面で大きな利点があります。

A2017の特徴

鋼材に近い優れた強度(高い比強度)

A2017の大きな強みは、重量あたりの強度が非常に優れているという点にあります。一般的な鋼材に近い引張強度を持ちながら、比重は鋼の約3分の1程度であるため、製品の軽量化を目的とした設計において欠かせない選択肢です。この特性により、大きな負荷がかかる部位であっても全体の重量を大幅に抑えることが可能となり、運搬コストの低減や動作効率の向上を図る際によく採用される傾向があります。

切削加工性が良好で精密仕上げに適している

多くのアルミニウム合金は粘り気が強く、切削中に工具へ溶着しやすいという難点がありますが、A2017は切り屑が細かく分断されやすい良好な切削性を備えています。旋盤加工やフライス加工において滑らかな仕上がり面を得やすく、精密な寸法公差が要求される部品加工に適しています。複雑な形状であってもスムーズに削り進めることができるため、加工時間の短縮や工具寿命の延長にも繋がり、製造コストを抑制する効果も期待できる材質です。

耐食性と溶接性における課題

高い強度を持つ一方で、銅を含む性質の影響で、耐食性については他のアルミ合金よりも注意が必要です。湿気の多い環境や屋外で使用する場合には、腐食が進行しやすいため、適切な表面処理を施すことが運用の前提となります。また、熱による割れが発生しやすいため、一般的な溶接加工にはあまり適していないとされています。接合が必要な場合には、ボルト締めやリベット接合、あるいは接着といった物理的な手法を選択するのが一般的です。

【加工後の特徴】経年変化と時効硬化による強度変化

A2017は、常温で放置しておくだけでも強度が徐々に増していく「自然時効」という現象が起こる特殊な性質を持っています。加工直後は比較的柔らかい状態であっても、時間の経過とともに硬度が高まり、最終的には安定した強度に到達します。この特性は設計上のメリットとなりますが、精密な寸法管理が必要な場合には、加工後の経年による微細な寸法変化を考慮しなければなりません。安定した品質を保つためには、時効の進み具合を把握した適切な工程管理が求められます。

【加工後の特徴】表面処理(アルマイト)の影響と外観

耐食性を補うため、加工後のA2017にはアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されるケースがほとんどです。ただし、銅成分の影響で処理後の色合いが黄色味を帯びたり、5000系などの他の材質に比べると発色が不安定になりやすい傾向が見られます。外観の美しさを重視する製品に使用する際は、事前に仕上がりの色味を確認しておくことが推奨されます。適切なコーティングを施すことで、実用的な耐食性と金属特有の質感を両立させることが可能になるでしょう。

A2017のよくある加工用途

航空宇宙・輸送機器分野の部品

軽量化が燃費や性能に直結する航空機産業において、A2017は古くから機体構造材や内装部品として利用されてきました。高い強度を維持しながら重量を削減できる特性は、人工衛星やロケットの部品、さらには自動車のカスタムパーツなどにも転用されています。衝撃に対する耐性も一定水準以上にあるため、信頼性が求められる輸送機器の重要箇所に採用される事例は少なくありません。まさに現代のモビリティを支える主要な材料の一つです。

産業用ロボット・自動化設備の構成部品

製造現場で稼働する産業用ロボットのアーム部分や、自動化設備の可動パーツにもA2017が多く採用されています。高速で動作する部品において、重量は慣性の影響を大きく左右するため、軽くて丈夫なジュラルミンは非常に適した素材です。高い剛性によって動作時のブレを抑制し、精密な位置決めを実現する一助となります。さらに切削加工性が良いため、ロボットの仕様に合わせた複雑な形状の部品を製作する際にも、加工のしやすさがメリットとして働きます。

高い寸法精度が求められる精密測定器・治具

精密測定器のフレームや、加工時にワークを固定するための治具にもA2017は多用される傾向にあります。摩耗に強く、長期間にわたって正確な寸法を維持する必要がある用途に適しているためです。鉄と比較して加工の負荷が小さいため、大型のプレートであっても平面度を出しやすいという利点もあります。実験装置や検査装置など、一点モノの試作部品から量産用の治具まで、幅広いものづくりの現場でその性能が発揮されています。

A2017の加工事例

自動盤加工による精密プラグの製作

加工事例

引用元HP:岡部機械工業公式HP
https://aluminium-costdown-center.com/case/684/

自動車業界向けのプラグの加工事例です。材質にはA2017を採用しており、自動盤加工によってφ10×10mmのサイズに仕上げられています。2000系合金の特性を活かし、要求される形状を正確に再現した仕上がりです。

参照元:岡部機械工業公式HP(https://aluminium-costdown-center.com/case/684/

A2017に適する加工法と注意点

マシニングセンタによる高精度切削

A2017の性質を活かすためには、マシニングセンタを用いた精密切削加工が一般的です。回転数や送り速度を最適化することで、滑らかな仕上げ面を得ることができ、後工程の研磨作業を簡略化できる場合もあります。ただし、高速切削時には熱が発生しやすいため、適切な冷却液(クーラント)の供給が不可欠です。熱膨張による寸法誤差を防ぎつつ、持ち前の切削性の良さを引き出すことが、精度の高い製品を作り出すためのポイントとなります。

腐食を防ぐための表面処理(アルマイト処理)

前述の通りA2017は酸化しやすい側面があるため、加工完了後は速やかに表面処理を検討する必要があります。代表的な手法であるアルマイト処理は、表面に酸化皮膜を形成し、腐食や摩耗から材料を保護する役割を担うものです。ただし、A2017特有の成分構成により、他のアルミ合金よりも皮膜の生成条件が複雑になるケースも見受けられます。表面処理を依頼する際には、材質を明確に伝え、用途に応じた適切な皮膜厚や処理方法を選択することが大切です。

溶接加工を避けるべき理由と代替案(締結加工など)

A2017は溶接が難しい素材に分類されており、無理に溶接を行うと接合部にクラック(ひび割れ)が生じたり、強度が大幅に低下したりする恐れがあります。そのため、設計段階から溶接を用いない接合方法を検討することが推奨されます。具体的には、ボルトによる締結や、ピン打ち、あるいは構造用接着剤の使用などが有効です。どうしても強固な一体構造が必要な場合は、大きなブロック材からの総削り出し加工を選択することも、品質を安定させる一つの手法です。

残留応力による加工後の「反り」対策

強度の高いアルミ材であるA2017は、内部に溜まった残留応力の影響を受けやすい傾向があります。切削加工によって表面を削り取る際、その応力が解放されることで、加工後に部品が大きく反ってしまう現象が確認されます。特に薄板の加工や、非対称な形状を削り出す場合には、事前の熱処理による応力除去や、表裏を均等に削り進めるなどの工夫を施すことが、仕上がり精度を維持するために求められます。

まとめ

A2017は、軽量さと強さを兼ね備えた、ものづくりにおいて非常に有用なアルミニウム合金です。優れた切削性を持つことから精密加工に適していますが、耐食性への配慮や溶接の難しさといった、扱う上で考慮すべき点も存在します。これらの特性を正しく理解し、適切な表面処理や加工プロセスを選択することで、製品の性能を十分に引き出すことができるでしょう。

“あと一歩”を解決!
技術力の光る
アルミ加工会社3選

既存製品の改良や新製品開発において、より高品質な素材を求めるメーカー担当者必見! 代表的な二次加工展伸材である「管材」「板材」「線材」それぞれの領域で高い技術や深い知見を持つメーカーを紹介します。※1

管材(パイプ)の加工なら
日本伸管
管材のこんな要望を解決!
  • #薄肉
  • #極小径
  • #内面美観
  • #肌加工
  • JAXAからの依頼で製作した内径φ8のクシ型ヒートパイプや、内径寸法精度+0.063/0の鉄道車両用シリンダー材、自動車やバイクのマフラー材など、高精度なパイプ材の製造が得意なメーカー。
  • 「偏肉率1.35%以下・外径φ22×内径φ9に対し公差±0.02」といった難しいオーダーにも対応できる技術力や経験を持つ。
板材・箔材の加工なら
MAアルミニウム
板材のこんな要望を解決!
  • #薄膜
  • #複雑圧着
  • #耐食性
  • #高強度
  • 印刷版や内外装建築材などの厚い板から、食品やリチウムイオン電池の包装材などの薄い箔まで、幅広い対応実績がある。
  • 論文発表や学会受賞歴※2など、研究や分析が得意なメーカーでもあり、強度・耐食性・成形性といった課題から素材開発の相談も可能。
線材・棒材の加工なら
神鋼アルミ線材
線材のこんな要望を解決!
  • #結晶粒微細化
  • #偏析防止
  • #限界加工率向上
  • #高圧対応
  • 国内で唯一、ビレットで均質化熱処理後に熱間圧延で線材化する「ビレット圧延方式」を採用※3しており、ミクロポロシティやブローホールがほとんど発生しない高品質な線材/棒材の製造が可能。
  • 半導体の導電材、自動車部品のネジ用素材など、ミリ単位の精密加工が必要な部品の製造実績もある。

※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。