アルミ8000系である「A8021」の特徴や用途について知りたい方へ向け、材質の基本情報を解説します。A8021は、純アルミニウム(1N30など)と比較して強度が高く、展延性と耐食性に優れる素材です。本記事では、A8021の成分的な特徴から具体的な加工事例、適した加工法まで詳しく紹介します。
8000番台のアルミ合金は、1000〜7000番台のどれにも該当しない、その他の系統に分類される合金です。アルミニウムは添加する成分によって1000系から7000系までに分類されますが、8000系はこれらの基本的な分類に当てはまらない、粉末冶金合金やその他の特殊な合金が属しています。その中でもA8021は、他の系統のアルミ合金に比べて鉄(Fe)の含有量が多い材料として知られています。
A8021の特徴は、鉄(Fe)の含有量が多く(1.2〜1.7%)、ケイ素(Si)の含有量が極めて低い(0.15%以下)という成分配合にあります。この独自の成分バランスにより、A8021は非常に優れた深絞り性能を発揮します。また、結晶粒が非常に細かくなるため、同等の厚さの他のアルミ合金と比較して、ピンホール(微小な穴)の発生率が極めて低くなります。これにより、光や水分、酸素などを遮断する高いバリア性を持つことが特徴です。
A8021は、その優れたバリア性と成形性を活かし、主に精密な包装用途や電池関連で広く活躍しています。代表的な用途としては、リチウム電池用のアルミプラスチックフィルムが挙げられます。電解液への耐食性や深絞り性が求められるパウチ電池において、A8021は業界標準の素材として採用されています。また、医薬品の分野でも低いピンホール率が評価されており、冷間成形医薬品箔(Alu-Alu箔)などの包装材としての利用が主流です。
A8021の高いバリア性や深絞り性を活かした具体的な製品事例には、以下のようなものがあります。一つは、高温多湿な環境へ医薬品を輸出する際に用いられる「トロピカルブリスター包装」です。高い防湿・防酸素効果により医薬品を保護します。もう一つは、ヨーグルトの蓋材やアルミ箔複合袋といった「高級軟包装食品」です。複雑な形状への成形が可能で、内容物の品質を長期間保つことができます。
A8021は、一般的なブロック状の切削加工部品としてではなく、主に薄い箔材として利用されるケースが主流です。そのため、加工法も箔の特性を活かしたものが中心となります。ここでは、A8021に適した加工法と、加工時の注意点について解説します。
A8021の加工には、主にプレス加工(深絞り加工)やラミネート加工が適しています。特にO状態(軟化させた焼鈍状態)での伸び率が優れているため、割れを起こすことなく深い形状を作り出す深絞り加工に非常に適しています。さらに、表面が滑らかでクリーンな状態を保ちやすいため、プラスチックフィルムや紙などの他の素材とのラミネート加工(貼り合わせ)も容易に行うことが可能です。
アルミ材全般の加工においては、熱による変形と工具への溶着に注意が必要です。アルミは熱伝導率が非常に高く、熱膨張率も大きいため、加工時の摩擦熱によって素材が膨張し、冷却後に寸法誤差が生じる熱変形が起こりやすくなります。また、素材が柔らかく粘り気があるため、切りくずが工具の刃先に張り付く「構成刃先(溶着)」が発生しやすく、加工面の精度低下を招く恐れがある点に留意しなければなりません。
アルミニウム合金は、添加する元素によって特性が大きく異なり、用途やニーズに合わせて細分化されています。A8021も、高いバリア性と深絞り性能という特定のニーズを満たすために設計された合金です。そのため、素材のポテンシャルを引き出すには、それぞれの合金の特性を深く理解し、適切な加工設備と豊富な知識を持つ専門の加工業者へ相談することが、品質の高い製品づくりにおいて重要となります。
既存製品の改良や新製品開発において、より高品質な素材を求めるメーカー担当者必見! 代表的な二次加工展伸材である「管材」「板材」「線材」それぞれの領域で高い技術や深い知見を持つメーカーを紹介します。※1
※1 当サイトでは、一般社団法人日本アルミ協会の「圧延・押出部門(二次加工)」会員名簿に掲載されている32社を二次加工のアルミ加工会社と定義している。
(2024年4月18日調査時点)
参照元:https://www.aluminum.or.jp/about/memberlist/
※2 参照元:一般社団法人 軽金属学会 小山田記念賞(第58回・第59回) 参照元:https://www.jilm.or.jp/page-recognition0221
※3 2024年5月16日編集チーム調査時点。